アマミノクロウサギ観察日記(写真・文/浜田太)
1994年11月9日、ついに子育て用の巣穴を発見。
96年、98年にも観察・撮影ができました。
これは、クロウサギ研究では、初めてのこと。
以下、観察記録を公開します。
(1)母ウサギは2日に一度、夜間ほとんど同時刻に授乳のためこの巣穴付近にきて、ピュイーと何度も鳴いた。
(2)周りを警戒しながら巣穴に近づき、クンクンと匂いを嗅いだ。
(3)前脚と口で齧るようにして巣穴の土を掘り始める。
およそ5~10分で開けた。
(4)赤ちゃんウサギが顔をのぞかせる。
さっきの母ウサギの鳴き声で穴のすぐ傍まできていたのだろう。
母ウサギは巣穴に顔を入れて、子ウサギを確認、やがて、穴から半身をだした子ウサギの顔を口で口づけしていた。
(5) 母ウサギは、後脚だけで立ち上がり、お腹をつきだすようにしている。
おっぱいをあげているのだ。授乳は約5分間。なんと短いのだろう。
二日に一度、それもたったの5分間だなんて!
(6)まだ飲み足りないような子ウサギを振りきるように母ウサギは前脚を下した。
子ウサギをじっとみつめる母ウサギの目が印象的だ。子ウサギはぐずりもせず、穴のなかに。
(7)その後、母ウサギは巣穴の前で毛づくろいを始める。
一仕事終えた安心からなのかもしれない
(8)穴を閉じる作業。
母ウサギは、掻きだした土を寄せ集め、前脚を使って穴を埋め始めた。
何度も何度も、器用に脚を使い、とんとんとんとんとリズムよく、堅く堅く土を固めていく。
それは20分も続いた。
後でわかったことだが、巣穴は奥行き約60センチ、高さ、幅とも30センチの部屋があった。
子ウサギはこの産室で産まれ、母ウサギが出た後もこの中で、乳を飲ませに来る母をじっと待つのだろう。
(観察後、もとに戻した)。
(9)もう大きくなってきた子ウサギは、母ウサギが来るのを待ちかねて、好奇心旺盛で穴から顔を恐る恐る出している。
巣立ちも近いようだ。
身を伸ばしながら、細い土のトンネルをやってくるのだろう。
(写真)穴から顔を出そうとしている子ウサギ
顔を出した子ウサギ。
まるで縫いぐるみのよう。
体を細く伸ばしながら、穴から出ようとしている。
でも恐くなったのかな。
くるりとお尻を向け、穴のなかに、潜り込む子ウサギ。
穴から完全に出た子ウサギ。
巣立ちが近づくと、母ウサギの授乳後、巣穴の前を歩き回ったりする。
これが巣立ちの準備ができたということか。
やがて、母ウサギは巣穴を閉じないで帰った。
二日後の夜、母ウサギが巣穴の近くで鳴くと、子ウサギは巣穴を離れ、母ウサギの方へピョコピョコ走った。
これが、子育て用の巣穴からの巣立ちであった。
森を歩く2匹のクロウサギ。
母ウサギと同居しだした子ウサギは夜毎、母ウサギに連れられて、森で生きていく術を教わっているように見えた。
(「とんとんとんのこもりうた」いもとようこ著・講談社)参照